CASE#7 ソーシャルワークという学問②
みなさんこんにちはケイです。
このブログでは社会福祉士である私が日々の仕事の中で思ったことを発信していこうと考えています。
今回のブログは医療ソーシャルワーカーの視点で発信していくことをご理解ください。
ソーシャルワーカーとして働き出した頃は社会福祉士の国家資格を取得した際の知識を臨床に落とし込むことはお世辞にもできていませんでした。
無論、現在も落とし込めている自信はありません。
ソーシャルワーカーの諸先輩方に問いたい。
若手ソーシャルワーカーに対して、「退院調整屋さんにならないで」「それはソーシャルワークではない」「他職種ともっと連携して」etc…
ごもっともな指摘をいつもありがとうございます。
しかし、若手は若手なりの意見もあります。
支援の過程より結果を重視されるのが臨床の現場です。病院の医療従事者全員がソーシャルワークという学問をを理解している訳ではないのです。
ソーシャルワークの視点を医療従事者へ発信しなければならない立場は重々承知しているつもりですが、若手は地位や名声、権力がないため、効果的な発信ができません。
臨床の現場のソーシャルワーカーは「退院」「転院」など見える形での結果が重視され、どのようなソーシャルワークを行なってきたかといった過程は評価されにくい傾向にあります。
なぜかというと、前回のブログでも言及した医学モデルの考え方が強いからです。
CASE#4 医療機関における医学モデルと生活モデルの共存①
CASE#5 医療機関における医学モデルと生活モデルの共存②
※評価は病院によって様々です。評価されている病院もあります。
このような状況を打破していくには、諸先輩方だけでなく若手も率先して、他の医療従事者へ向けてソーシャルワークを発信し、定着させていくことが重要になります。
特に急性期の病院は限られた日数の中でソーシャルワークを臨床に落とし込むのは意識していないと難しいです。
ここまでのことで何がいいたいかというと、
ソーシャルワークの質はもちろん大事であるが、量をこなさなければ、その質はみえてこない。ということです。
ここでいう量とは、「退院調整屋さん」のことを指しています。
質を追求するにはそれなりの量を確保し、それをある程度許容する時間が必要と考えるのは私だけなのでしょうか。
勘違いしてほしくないのは、最初からソーシャルワークをやらなくてよいと言っているのではありません。
あくまでも比率として「退院調整屋さん」と「ソーシャルワーク」の比率を最初のうちは「退院調整屋さん」に重きを置いた方がよいのではないかということです。
「退院調整屋さん」として結果を出して、周囲に認められた後は、それなりの発信力をもつことができると思います。その段階でソーシャルワークを存分に発信していくのでも遅くないような気もしますが、みなさんはどのようにお考えなのでしょうか。
様々な意見を聞いてみたい次第です。
CASE#6 ソーシャルワークという学問①
みなさんこんにちはケイです。
このブログでは社会福祉士である私が日々の仕事の中で思ったことを発信していこうと考えています。
医療ソーシャルワーカーの知識、技術向上のために読者の皆様は平時何をされていますか?
学会の参加、職能団体の研修の参加、日々の臨床など。
意識の高い人は知識、技術の向上の取り組みだけで居酒屋さんで語り合えたりするものです。
ソーシャルワーク専門職のグローバル定義
ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。
社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学、および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。
この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい。
唐突に、ソーシャルワーク専門職のグローバル定義(以下グローバル定義と略します。)を出してすみません。
社会福祉士、精神保健福祉士の資格を取得されている皆様ならば必ず聞いたことのあるこの定義。私たちソーシャルワーカーはこれを元に日々の臨床を行うことが望ましいとされています。
このブログを見ていただいている方の統計は取れていませんが、現役で臨床をされている方が多いと思われます。本当にお疲れ様です。
日々の臨床に追われている方もたくさんいらっしゃることでしょう。
私自身、このブログを書くために久しぶりに勉強をやり直した次第で、正直なところ日々の臨床でグローバル定義を念頭において支援できるほどの余裕はまだありません。
しかし、グローバル定義を意識してする臨床と、しない臨床では支援のフィードバックをする際に、グローバル定義を基づいて支援できたかの指標にすることができるため、有効なのではないかと思います。
ソーシャルワーカーでありながら、ソーシャルワークという学問を十分にまだ把握しきれていないのが私自身の現状です。
グローバル定義の解説は今回は行いませんが、これからも「こうでもない、ああでもない」と悪戦苦闘しながら、この複雑な学問を生涯学んでいくことになるでしょう。
次回はソーシャルワークという学問を学んでいく中での葛藤について書いていこうと思います。
CASE#5 医療機関における医学モデルと生活モデルの共存②
みなさんこんにちはケイです。
このブログでは社会福祉士である私が日々の仕事の中で思ったことを発信していこうと考えています。
前回の続きです。
医学モデルと生活モデルについて書いていきます。
最近実際にあった患者を例にしてみると・・・
80代後半の女性。ADL自立。入院前は内服薬自己管理可能。退院後は独居の生活に戻る予定。
どこの病院にも入院している可能性があるような患者です。
7日間の入院で4日目には予定通り7日目の退院が内定していましたが、元々飲んでいるお薬に加えて、新しいお薬が2種類処方されました。
この患者は最後まで内服は看護師管理のままでした。
医療従事者はお薬の飲み忘れはインシデントになりますので仮に患者が内服を入院中に忘れてしまうと医療従事者側の負担になってしまいます。
どこの病院もインシデントレポートは大変です。患者がミスするくらいであれば、医療従事者が管理した方がミスが減りますし、考え方によっては楽かもしれません。
非常に理解できます。
私たち医療ソーシャルワーカーが内服管理をしているわけではないので口を出しづらい部分ですが、本人の今後の生活を重視した場合、本人に内服管理をしてもらうべきなのではないでしょうか。
退院後は独居での生活が待っています。内服を管理しているのは本人です。
退院後お薬を管理するのは誰?
自宅でサポートしてくれる人はだれかいる?
この視点がないと内服を本人管理にする考え方は浮かばないのです。
「でも仕方ない忙しいし。。。」
しかし忙しいを言い訳にしていたら何もはじまりません。
今後はMSWのような考え方を持った医師や看護師が増えていけば、より地域包括ケアシステムが具体化していくのではないでしょうか。
それと同時にMSWも他の医療従事者の視点はリスペクトしていかなければならないのです。
医学モデルと生活モデルは共存可能と信じています。
CASE#4 医療機関における医学モデルと生活モデルの共存①
みなさんこんにちはケイです。
このブログでは社会福祉士である私が日々の仕事の中で思ったことを発信していこうと考えています。
大学を卒業後は主に医療分野の社会福祉士、すなわち医療ソーシャルワーカーとして仕事を現在に至るまで続けています。
医療ソーシャルワーカとして働いて率直に皆様に伝えられることを書いていきます。
あくまでも個人としての見解です。
医療ソーシャルワーカーという仕事は非常にやりがいを感じます。
クライエントの自己実現を支援していくなかで医療ソーシャルワーカーは大きな役割を持っており、地域包括ケアシステムにおいて、生活モデルを広めていく担い手として欠かすことのできない存在になることは間違いないでしょう。
しかし、現実はまだまだ乗り越えなければいけない課題がたくさんあります。
日本の医療はまだまだ医学モデルの考え方が主流であり、生活モデルを重視する我々医療ソーシャルワーカーの考え方を理解していない医療従事者も非常に多くいらっしゃいます。
しかし国が示している地域包括ケアシステムは明らかに生活モデルを重視した取り組みです。
我々の考え方は間違ってはいないのですが、この考え方に賛同、あるいは理解していただける医療従事者が極端に少ないのです。
もっとかみ砕いて説明していきましょう。
医師をはじめとする多くの医療従事者は、
退院=「ゴール」という考え方です。
骨折が治ったので退院。抗生剤が終了したので退院。
医療機関としては一般的な考え方です。簡単にいうと根治したら退院。
一方、医療機関で唯一の福祉職である医療ソーシャルワーカーは、
退院=「スタート」という考え方をしています。
「骨折は治ったけど今の生活動作で入院前の生活が送れるかな」「インスリン注射が必要になったけど自宅でも安全に打てるかな」
様々な退院を阻害する要因を患者が克服して元の生活に戻れるように支援します。
患者の服薬を例にしてみると・・・
80代後半の女性。ADL自立。入院前は内服薬自己管理可能。退院後は独居の生活に戻る予定。
どこの病院にも入院している可能性があるような患者です。
7日間の入院で4日目には予定通り7日目の退院が確定していましたが、元々飲んでいるお薬に加えて、新しいお薬が2種類処方されました。
この患者は最後まで内服は看護師管理のままでした。
退院後は独居での生活が待っています。内服を管理するのは本人です。
病院という箱物の中では、確かに女性は退院されました。
実際に退院した女性は、新しい薬を2種類飲まなければいけないという新しい生活が待っているのです。
次回に続きます。
勝手に病院訪問 社会福祉法人 三井記念病院
みなさんこんにちはケイです。
このブログでは社会福祉士である私が日々の仕事の中で思ったことを発信していこうと考えています。
今回は「勝手に病院訪問」と題しまして、実際に私が様々な病院へ訪問して私なりにその病院の説明をするといった自己満足企画です。定期的に記載していこうと思いますがあくまでも個人的な意見ですので悪しからず。
三井記念病院は病床数482床を有する急性期病院です。
地域医療支援病院や、東京都がん診療連携拠点病院等の指定を受けており東京都の医療を支えています。
DPC特定病院群でもあるため医療レベルが高いことも伺える病院です。
DPC特定病院群とは、簡単にいうと大学病院に準ずる機能を有する病院ということで、診療密度、医師研修の実施、医療技術の実施、補正複雑性指数(いかに複雑な治りにくい病気を治療しているかといった指数)といった規定をクリアしなければなりません。
さらになんといってもJoint Commission International (JCI)の認定を受けている数少ない病院です。
JCIは国際的基準に乗っ取り、極めて難しい規定をクリアしている世界基準の病院である証明みたいなものです。日本中の病院でもほんの一握りの病院しか認定されていません。
似たような認定として病院機能評価がありますが、病院機能評価はあくまでも日本国内のものであるため、比較するものでもないのかもしれませんが、JCIの方が上位互換と言えるでしょう。
1909年から開院した歴史のある病院ですが、戦前に後の医療ソーシャルワーカーの先駆けとなる夫人相談員が1919年に配置されたようです。
日本で最初の医療ソーシャルワーカーは1929年の聖路加国際病院浅賀ふさ先生が有名ですが、それよりも前から活動があったというわけです。社会福祉士の国家試験には絶対に出題されないようなコアな歴史ですね。
ドラマのロケ地にもなっていたとのことで、ドラマに憧れて入職をきめた医療従事者もいるかもしれませんね。
ではまた⭐︎
CASE#3 医療ソーシャルワーカーとは③
みなさんこんにちはケイです。
このブログでは社会福祉士である私が日々の仕事の中で思ったことを発信していこうと考えています。
前回に引き続き、医療ソーシャルワーカーの業務内容について説明していきます。
公益社団法人 日本医療ソーシャルワーカー協会のページを引用します。
↓
医療ソーシャルワーカーとは
保健医療機関において、社会福祉の立場から患者さんやその家族の方々の抱える経済的・心理的・社会的問題の解決、調整を援助し、社会復帰の促進を図る業務を行います。
具体的には、
1. 療養中の心理的・社会的問題の解決、調整援助
2. 退院援助
3. 社会復帰援助
4. 受診・受療援助
5. 経済的問題の解決、調整援助
6. 地域活動
を行っています。
〔厚労省『医療ソーシャルワーカー業務指針』より
我々医療ソーシャルワーカーのほとんどが厚生労働省の医療ソーシャルワーカー業務指針に則り業務を行なっています。
正式な文章がもちろんありますが、このブログではあくまでも要点のみを分かりやすく説明していきます。
4. 受診・受療援助
文字通り患者の受診、受療援助を行います。入院中、外来(入院外)は問いません。
具体的にはアルコール依存症の方への断酒会(ピアサポートを含む)への斡旋や、透析患者が通院するための手段をクライエント一緒に考えたりします。
5. 経済的問題の解決、調整援助
医療ソーシャルワーカーをしていると入院、外来を問わず、経済的に不安を抱えている患者が多いです。健康な私たちでさえ、高い金額の買い物をしたときや、養育費など様々な場面で経済的不安を抱えることも少なくありません。
医療機関の受診は多かれ少なかれお金の負担が必要になります。特に入院の場合はどのくらい入院するかはっきりとわからないことが多いため、不安も増してしまうのです。
具体的には、高額療養費、生活保護などが該当します。
6. 地域活動
地域包括ケアシステムが謳われている昨今において、地域活動は年々重要性を増しているように感じます。
病院完結型から地域完結型になるにあたり、患者が地域のなかでその人らしい生活が出来るよう、関係機関、関係職種との連携を図ります。
私の地元では買い物に行けなくなった高齢者を対象に格安料金で、地域のスーパーを巡回するバスが利用できるサービスが独自にあります。このような情報を私たちが把握しているかしていないかによって、患者の生活は大きく変わってきてしまいます。
住んでいる地域のニーズに応じて様々な活動があります。
大まかに医療ソーシャルワーカーの業務内容について説明しましてきました。
しかし、実際の現場は限られた時間の中で臨床するため、上記の項目すべてを満足に実践できているかと問われると自信をもってYESとはいえない職場が多い印象です。
これからも臨床を行っていく中でこれらの業務を自信をもって遂行していると思えるよう、頑張ります。
CASE#2 医療ソーシャルワーカーとは②
みなさんこんにちはケイです。
このブログでは社会福祉士である私が日々の仕事の中で思ったことを発信していこうと考えています。
医療ソーシャルワーカーの業務内容について説明していきます。
公益社団法人 日本医療ソーシャルワーカー協会のページを引用します。
↓
医療ソーシャルワーカーとは
保健医療機関において、社会福祉の立場から患者さんやその家族の方々の抱える経済的・心理的・社会的問題の解決、調整を援助し、社会復帰の促進を図る業務を行います。
具体的には、
1. 療養中の心理的・社会的問題の解決、調整援助
2. 退院援助
3. 社会復帰援助
4. 受診・受療援助
5. 経済的問題の解決、調整援助
6. 地域活動
を行っています。
〔厚労省『医療ソーシャルワーカー業務指針』より
我々医療ソーシャルワーカーのほとんどが厚生労働省の医療ソーシャルワーカー業務指針に則り業務を行なっています。
一つずつ解説していきます。
※私が勤務している病院での体制がもとになりますので、全ての医療ソーシャルワーカーに該当しません。
私は急性期の医療機関で 勤務しているため、あくまで参考程度でお願いします。
1. 療養中の心理的・社会的問題の解決、調整援助
救急患者への支援救急患者は抱えている生活問題や心理、社会的問題をそのままにして、突然の病院受診を余儀なくされる例が多いです。そのため、身体治療と同時に顕在化する心理、社会的問題へのアプローチを行います。
2. 退院援助
医療ソーシャルワーカーといえば退院支援を思い浮かべることが多いと思います。
文字通り退院援助を行います。
入院している患者が元の生活に戻れるように援助します。
高齢の方は入院の影響で様々な問題に直面することが多いです。
3. 社会復帰援助
患者の社会復帰の援助を行います。
怪我や病気の影響で学校を休んでしまった学生へ学校で孤立しないような体制構築や、同じく怪我や病気の影響で仕事を辞めた患者への職業の斡旋などが該当します。
長くなってしまいましたので、次回に残りの3つを解説します。